先日東京都内にて
桜の開花宣言が出され、
いよいよ
春本番も間近、といった感じになって参りました。
ここ九州地方も次第に冬の足音が遠ざかり、
新たな季節の到来を肌身に感じる次第でございます。
さてまだぽちぽちと書き綴っております門司港散策、
今回ははね橋・
ブルーウイングもじを渡って
新浜地区へ。
そこに建つ一軒の洋館を取り上げます。

「
ブルーウイングもじ」を間近に望み、「大連友好記念館」の
向かいに佇むこちらの重厚な建物が、今回のお目当て。
ここは
旧門司税関明治45(1912)年、当時一般開港に指定され横浜・神戸と並ぶ国際港へと
発展を遂げつつあった門司港に於ける、貿易品の課税・監督を請け負う
関税の2代目(初代は明治43年、火災により焼失)
庁舎として建てられました。
設計を担当したのは建築技師としてのみならず、
俳人としても才を発揮しながら若くして没した
咲壽栄一(さくじゅ えいいち)
その過程に於いてはドイツで建築技法を学び、
日本橋や東京商業会議所(現存せず)、横浜正金銀行本店(現神奈川県立博物館)や
横浜新港埠頭倉庫(現
赤レンガ倉庫)といった
官公庁・公的施設のデザインを手掛けた
妻木頼黄(つまき よりなか)が
指導に当たりました。
ブルーウイングもじからも見えます
建物はルネサンス様式を取り入れた
赤レンガ造りの木骨構造で、
骨組みを包むレンガの構成は、大小のレンガを
それぞれ積み重ねた
イギリス式税関施設として使われたのは昭和2(1927)年までで、
税関の新庁舎建設にともない民間に払い下げとなって、
事務所や倉庫として使われていました。
その後民間運営の下で施設の一部取り壊し、窓の封鎖等によって
変容していた「旧門司税関」でしたが
平成4(1992)年、建物の持つ建築様式や
優美な佇まいに着目した北九州市が、所有権を
取得平成6(1994)年までの間に修復や欠損部分の復元を行い、
かつての官庁舎は往時の威風を取り戻すこととなりました。

付近には税関庁舎時代を物語る遺構も。
これは大正8(1919)年に門司税関によって設置された
浮さん橋の跡。
港の沖合に停泊する外国籍貿易船との間を作業員を乗せて
行き来する小型船の発着場の他、
積み下ろされる船内用品の監視・取り締まりを行う場所として
利用されていました。


どっしりとした造りの玄関を潜ると、そこは開放的な
エントランスホール2階分、そして天井にまで及ぶ吹き抜けから、
赤レンガや天井に張り巡らされた木組みの構造までもが
手に取るように分かります。

館内の所々に、税関の仕組みや役割、門司税関の歴史を解説したパネル、
その他こういった資料が展示されています。

こちらは明治7(1874)年~同9(1876)年に遣り取りされた公文書。
そこには当時の内務卿(内務省長官。副首相相当)・
伊藤博文(いとう ひろぶみ)、
大蔵卿(現在の財務大臣)・
大隈重信(おおくま しげのぶ)の連名にて
太政大臣・
三条実美(さんじょう さねとみ)宛てで
税関が未設置である下関に於いて、山口県官吏(国家公務員)による
取り締まりを行うべきである、という上申がなされています。
思いがけない所で「お宝」を発見。
この他1階には関税の役割を周知するための資料として、
押収された現代の偽造品や密輸品が展示されています。
特に密輸品に至っては、パソコンのバッテリー部分や真ん中がくり抜かれた本、
消化器や靴などに「白い粉」や拳銃が押し込まれた、
なんでも有り状態。
こんな周到な手段で掻い潜ろうとする者たちに目を光らせ、
取り締まりに当たる税関の皆さま、ご苦労様です。

階段を上がって2階部分は、建物の構造を生かした
「休憩スペース」となっています。

こちらの真鍮製金具、
昭和2(1927)年以降の門司税関の入居先、
旧湾岸合同庁舎(税関施設としては3代目)に
取り付けられていたもの。
おそらく現庁舎(昭和54 1979年完成)移転後に移されたものでしょうが、
税関庁舎としては「先代」に当たる洋風建築に、
違和感なく溶け込んでいます。
2階の一角には「資料コーナー」も設けられ、
明治・大正・昭和の門司港の姿を、絵はがきを通して
知ることが出来ます。

その上、3階部分は
展望室狭い空間、なおかつレトロ建築ゆえ視界は限定的ながら、
「大連友好記念館」や高層マンション「門司港レトロハイマート」

街並み越しに関門橋

前回ご紹介した
ブルーウイングもじ(しかもちょうどオープン状態!)を
望むことが出来ます。

1階へ戻りまして、やって来たのはこちら、
フルーツファクトリー モーン・デ・レトロ果物専門店直営、北九州市内に店舗を展開する
「世界中のフレッシュフルーツを買って食べて贈れるお店」。
レトロな洋風建築の一角に現れる「今様」のお店では
山盛りの果物やアイスクリーム、ジュレが贅沢に載せられた
パフェ(お店では「パルフェ」と称す)やアイスバー、
新鮮果実を搾ったフルーツジュースを楽しめる他、
タルトやフルーツの盛り合わせ、ジャムといった
「お持ち帰りメニュー」も充実。
好みのスタイルで瑞々しいフルーツを味わうことが出来ます。

券売機でチケットを買い、カウンターへ提出。
しばし待ってから眼前に現れましたるは、
「果物の良いとこ取り」と言える
ミックスフルーツジュースと
レトロ店オリジナル、こぼれんばかりのフルーツと
ソフトクリーム、その下に果実入りぶどうジュレが詰め込まれた
レトロジュレビジュアル・ボリューム共に大盛り感溢れる一品。
船溜まりを望むテラス席で、寒風に耐えつつ味わう。
(※今はまだ海風の冷える季節のため、頂く際は
風をしのげる場所か屋内店舗部分での飲食をオススメします)
官庁舎ならではの風格ある造りと税関の成り立ち、
おいしいフルーツパフェを楽しんだひととき。
人の営みが生みだした仕組みから出来た施設が、
今こうして人を集め、土地を潤わせている。
これもある種の「サイクル」と言えるのかも知れません。
次回は夜の門司港レトロ散策!
ライトアップされた各施設と、美味しく、温かい
食事処を巡ります。
それでは!

撮影スポット、見つけた。