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茅の香りと土蔵の趣き

久方ぶりに顔を出した陽射しに、ようやく梅雨明けを
実感します。
降り続いた雨にことごとくを洗われた大地の
少しでも早い復旧を願って。

しなの鉄道戸倉駅から昼食場所を探しつつ温泉街へと歩き出した
私の目に入って来たのは、古風な茅葺き屋根の
大きな家屋。
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ここは蕎麦料理処 萱(そばりょうりどころ かや)
元々は千曲地域きっての名家であった造り酒屋・坂井銘醸の母屋であった
約250年の建物で、古文書を頼りに座敷9部屋を復元、
平成6(1994)年より営業を始めました。
店内はその座敷を食事処としている他、広い土間部分は日本酒や各種土産物を
取り揃えたおみやげ処 萱の庵(かやのいおり)、
そば粉を用いたデザートが味わえるカフェ 萱の庵(かやのあん)として
活用されています。
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入り口付近。高く開放的な天井と各所に設けられた窓が、
明るい空間を演出しています。
写真右側が土産処、左奥がカフェとなっています。
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母屋右手、区切られた座敷部分が食事スペース。
私が案内された部屋はこの地域に隠然たる権威を誇った
家門らしい設え。
なお店舗の一部は現在修理中
そのため座敷の一角にブルーシートが掛けられていたり、
工具の音が響いたりしています。悪しからず。
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壁際には行燈風の間接照明や酒を入れる桶、「坂井醸造」や
「酒井酒造」と刻まれた徳利、現在の坂井銘醸の酒瓶が置かれ、
造り酒屋としての歴史を感じさせます。
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まずは一品。長野県水産試験場が開発した養殖ブランド魚、
信州サーモン
ニジマスブラウントラウト、2種の魚を交配させて誕生した品種から採れる身は、
きめが細かく肉厚。しっかりと脂が乗っています。
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こちらがメインのなめこそば
季節限定の冷やそばで、
酒造りにも使われる仕込み水を活用した出汁はあっさり。
つゆに浸かったなめこ共々さっぱりとした風味ですが、上に載せられたネギや大根おろしの辛味も
加わり、なかなか奥ゆかしい。
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ふと目に留まった、床の間に掲げられた掛け軸。
なんだかシンプルな筆致ながらも味の有る絵。
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桃色の襟と名付けられた絵は、明治末~昭和初期に掛けて
活躍した画家、竹久夢二(たけひさ ゆめじ、本名・茂次郎)の手によるもの。
彼が紡ぎ、後に曲が付けられたことで大ヒットとなった詩・宵待草(よいまちぐさ)で
知られる人物ですが、その本分は美人画
独特の色気と情感を醸し出すその画風は夢二式美人と呼ばれ、
広く大衆人気を生み出す一助となりました。
生前夢二は戸倉上山田温泉を訪れ、ここ坂井家に滞在
宿代として彼が描き残した絵画数点が、こうして伝えられています。
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食後は広大な敷地に残され、資料館として公開されている土蔵群を探検!
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かつて酒の醸造や貯蔵に用いられていた蔵には、
それぞれ建てられた時代によって呼称が付けられています。
かつて精米所として使われていた明治蔵は、
現在資料館及び体験陶芸コーナーとして公開中。
内部は坂井家に残された工芸品や家財道具の他にも
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平安時代末~鎌倉初期の僧侶にして歌人・西行法師(さいぎょうほうし)真筆の
和歌や・・・
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「一万円札の人」として日本人に馴染み深く、激動の明治時代に学問・思想・教育の
分野に於いて多大なる功績を残した福沢諭吉(ふくざわ ゆきち)
直筆の額が!
これは私財を投げうってまで温泉街の開発に邁進する坂井家15代・
坂井量之助を激励すべく贈られたもの。
束縛化翁是開明(化翁=造化の神を束縛することは是れ開明である)と
書かれています。
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こちらが戸倉温泉の開祖・坂井量之助氏。
千曲川の水難と闘いながら温泉街の開発と治水に勤しんだ人物ですが、
家業を顧みない没頭ぶりと投資、その後の事業の失敗は
坂井家の傾衰を招き、破産宣告を受けるに至ります。
どうにか破産は免れたものの、再起を図る最中に量之助は病死
志半ばでの死去ではありましたが、彼の遺徳は地元の人々によって顕彰され、
故人を偲ぶ石碑が温泉街に建てられているそう。
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寛政12(1800)年築の寛政蔵
建材には八ヶ岳山麓より切り出されたと伝わる栗材が用いられており、
建物は米蔵として活用されていました。
二つに別れた土蔵は片側が江戸時代の俳人で坂井家との関わり深い、
加舎白雄(かや しらお)の資料を展示した
加舎白雄記念館、もう片側が竹久夢二の絵画数点や
恋多き彼の一生を展示・解説する浪漫人夢二館となっています。
なおこの日「加舎白雄記念館」は酒の醸造に使用するため閉館していました。
残念。
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江戸時代末の慶応2(1866)年に建てられた慶応蔵
この蔵が出来て以降、ここが酒造りの中枢となっていました。
内部は米を蒸すための蒸米器・甑(こしき)を備えた釜場
酒造りには欠かせない麹(こうじ)を育てるための麹室(こうじむろ)が
設けられていました。
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こちらが麹室
麹は酒の出来を左右する生命線。そのため貯蔵した麹米に雑菌が
付着するのを防ぐ目的で、この麹室は一部の限られた人のみに
出入りが許されていました。
この部屋の周囲は麹菌が繁殖しやすい温度(約26℃)を維持するために
特殊な構造で出来ており、壁面には60cmの厚みを持たせ、
床と天井は1mの厚みにした上で籾殻を詰め、
断熱構造としています。
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土蔵群の中で一番古い宝暦蔵(ほうれきぐら)内部。
宝暦11(1761)年に建てられた蔵は元々酒造りの蔵として、
時代が下ってからは貯蔵庫として使われていました。
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慶応蔵を増築し、新潟からの杜氏が寝泊まりしていた大正蔵
現在は酒造りの道具を展示した酒造資料館、および
ガラス工芸品の製造・販売を行うステンドグラス工房として
利用されています。
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酒造資料館部分。年季の入った酒造道具が所狭しと並べられています。
400年に及ぶ坂井銘醸の、言わば「生き証人」。
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米の蒸し器・(こしき)の中を覗くことも出来ます。
良いお酒を造るための工夫が、一目瞭然!

この他敷地内には一番新しく、仕込み蔵として使われていた昭和蔵
在り、現在は「酒蔵ギャラリー」としてイベント・コンサート会場としても供されているそう。
(内部には立ち入っておりません)
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土蔵群から中庭越しに母屋を眺める。
手前に見えるクロマツの木は、千曲市の保存樹木
指定されているそうな。敷地内の美観形成に一役買っています。

昼ごはんの為に気軽に立ち寄った積りが、思わぬ発見の連続となった
ひととき。
気付けば宿のチェックイン時間が迫るまで探索に没頭してしまいました。
これもまた、旅の楽しみ。
次回は待望の戸倉上山田温泉街へ!
老舗湯治宿と温泉街、千曲川流域の景観を取り上げます。
それでは!

コメント

No title

こんばんは!

信州もお蕎麦が有名と聞きますので、クオリティが高そうですね(#^.^#)

わたしはそばアレルギーなので、食べることができないのですが(笑)

桃色の襟…女性の魅力的なところを描写されてて、素敵ですね(*´ω`*)

最後の画像のクロマツ、立派ですね!
母屋より大きいですし、樹齢も凄そうです(・ω・)

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プロフィール

詞-Nori-

Author:詞-Nori-
旅行系ブロガー。
趣味は旅行、町歩き、食べ歩き、
鉄道等々。

目下地元・福岡県に戻り、
次なる行動に向けて準備中。