まだまだ続きます、門司港散策。
前回は大正社交界の面影を留める「旧門司三井倶楽部」を
見て参った訳ですが、今回はその続きから。
立て続けに行きますよ~!
まず1カ所目、「旧門司三井倶楽部」からは道路を挟んで向かい側に建つ・・・

こちらのビル。(旧門司三井倶楽部敷地内から撮影)
これは
旧JR九州本社ビル昭和12(1937)年、「旧門司三井倶楽部」の元所有者・
三井物産門司支店の
社屋として建てられました。
建物は地上6階・地下1階、高さ30.5mの
鉄骨鉄筋コンクリート造アメリカに範を取った
アメリカ式オフィスビルという形式で、
建築当時
九州一の高層建築でありました。
(
ス〇イツリーみたいな代物が建っている現代から考えると、
ここ1世紀ほどで起こった、建築技術の目覚ましい進歩が分かります)
お向かいの「旧門司三井倶楽部」とセットで三井財閥の威光を示した
ビルディングは、戦後の
財閥解体に伴い
昭和28(1953)年に国鉄へと所有権が移譲され、
門鉄ビルと
改名の上九州の鉄道網を統括する「九州鉄道総局」が置かれました。
昭和62(1987)年の
国鉄分割民営化後はそのまま
JR九州の
所有となり、
北九州本社が置かれるとともに
JR貨物九州支社も同居。
平成17(2005)年に
JR九州が本社機能を福岡市に集約し、
オフィスビルとしての役目を失った建物を北九州市が
譲受昭和初期のビル建築としての貴重な姿を保ちつつ、
現在は各種展示施設やカフェが入居する
公共施設として活用されています。
設計者は福岡県出身の建築家・
松田軍平(まつだ ぐんぺい)
実は「旧門司三井倶楽部」を設計した
松田昌平(まつだ しょうへい)は
お兄さん。
後年「旧門司三井倶楽部」が現在地へと移築された事で、
兄弟で手掛けた作品が駅前の一等地で向かい合うこととなりました。

早速入って行きましょう!
築80年を超え、やや古色蒼然といった趣のビルディングですが、
玄関部分は
黒御影石でオシャレにお化粧。
入口横には所有者の変遷を示すJR2社のマーク、
上部にはオフィス用にはなんだか似合わない(?)、立派なレリーフが
彫られています。

現在のところ、一般開放されているのは
1階のみの様子。
奥は門司港地域の昔懐かしい物品や書籍が保存・展示されている
思ひでステーション門司となっています。
現在は休館・リニューアル中の「関門海峡ミュージアム(海峡ドラマシップ)」より
移された、門司港名物・
バナナのたたき売りを
扱う
バナナ資料室が移され、
バナナ輸入の成り立ちや「風物詩」の歴史と様相を知ることが出来ます。

1階に入るもう一つの施設、
海事広報展示館またの名を
関門海峡ライブ館公益社団法人・
西部海難防止協会によって運営される
展示施設で、
海難防止思想を普及する活動の一環として、
関門海峡と周辺海域を映す
ライブカメラの他、
スタッフさんの説明や船舶の種類、航海法を解説した展示等から
船や海の安全について学べる施設。
(説明書き参照)

中へ入ってみると、大小3つずつのモニターが設置されています。
で、左側の主モニターに映し出されているのが、
関門海峡や
周辺海域(
響灘など)の様子をリアルタイムで映した
ライブ映像モニターの手前に置かれたスティックで視点を動かしたり、見たい海域を選択したり。
上部のつまみを左右に回せば、特定の船舶へのズームイン・ズームアップも可能。

右側の小モニターには、船舶のデータやこの日
関門海峡を通った
船舶のコースが示されています。
この画面を見るだけでも、コースや国籍、目的、用途も様々な船舶が
関門地域を航行していることが分かります。
特に航路が限定され、日本の東西を結ぶ上で避けて通れない
関門海峡付近は、
真っ赤っか!別のモニターでは船舶情報を閲覧でき、
運行会社や国籍、船種、出港地点から目的地まで一目瞭然!

スタッフさんの説明を聞きながら、ライブ映像を眺める。
特に
関門海峡付近では船舶が集中し、
大小様々な船が絶えることなく行き交っています。
船舶同士の交信に用いられる
国際信号旗の種類や使用法、
幅が狭く、船が密集する
関門海峡での
交通ルール、
(東へ向かう船が下関側を通り、西を指す船が門司港側を抜ける、等)
潮流の向きや速さを示す
潮流信号等、
普段知る機会の無い「
海の交通安全」の仕組みが目白押し!
なんだか楽しい!
ライブモニター横のホワイトボードには、この日の
関門海峡の潮流が
示されていました。
時間帯によって日に数度、西から東、そして東から西へと潮の流れが変化する
関門海峡日によって
最大10ノット(=時速18.5km)にも達する
速く、かつ複雑な潮流は、古くから船舶が航行する上での障害となり、
海峡付近の狭隘な地形と船舶の集中も相まって、
この海域を
海の難所たらしめて来ました。
一度事故で海峡が封鎖されてしまうと、通過を予定していた船は
鹿児島県沖からの迂回を強いられることも有り、
交通・物流の面からも特に航路の整理、安全の確保には
配慮されているそう。
われわれが安心して航海や物資の確保が出来るのも、
人知れず働く海の人たちや、航路の保全に心血を注ぐ皆さんの
努力あっての事なのでしょうね。

展示スペースの一角に置かれた
電子海図(チャート)
映されているのはもちろん
関門海峡付近。
その範囲内には陸地や半島、灯台、海底の地質等のデータが
非常に細かく入力されています。
船の乗組員は、日々この海図を頼りに
海と闘っているのですね。
この他海の素人たる私が驚いたのは、日本近海の地質を記した
地図(写真なし)
これを
赤・
緑2色のフィルムを貼ったメガネを通して見てみると・・・
地形が立体的に見えるんです!これで日本列島や近海の地形が
丸わかり!さて、思い切りはしゃいでお腹が減ったところで、
お昼ごはん向かったのは前日お昼を摂った「エムズカフェ」のお隣(笑)
寿し処 光本門司港駅の至近、船着き場を望む好立地に建つお店。
関門地域の地魚や寿司の盛り合わせ、
昼限定の海鮮丼などが
味わえます。

店内からは、
ご覧の通り!船着き場や関門橋、
関門海峡を望み、行き交う船や人々、
対岸・下関市までも見ながらの食事が楽しめます。
ここで注文したのは昼限定・海鮮丼
では無く・・・
特上にぎりネギトロ軍艦×2、エビ、ウニ、イクラ、穴子、ブリ(かな?)、イカ、
タイ、マグロが載って計
2000円ナリ。
ついでに「光本」自慢の
旨鯖握り2貫200円も付けてみる。
豊富な海産物の獲れる関門地域の誇る海の幸!
どれも素晴らしい味と鮮度でしたが、特に気に入ったのは
穴子とマグロどちらも炙った状態での提供(穴子は当たり前か)でしたが、
穴子は少しパリっとした食感と口の中いっぱいに広がる香り、
一方のマグロは塩で下味を付け、
素材そのままの味を楽しめる、
板前さんの技と工夫の光る一貫でした。

お店の人に薦められ、
お吸い物と
茶碗蒸しも追加。
しっかり出汁が染み込んだ濃厚な茶碗蒸し、優しい味わいと香りが食欲をくすぐるお吸い物と、
どちらも美味しく頂きました。
明るく、朗らかなお店の方たちも好印象で、気分良く散策に戻ることが出来ました。
ごちそうさまでした!大満足の昼食を終え、次の場所へ。
「寿し処 光本」からスグ(笑)、道路の曲がり角に建つ・・・
旧大阪商船大正6(1917)年、大阪商船(現商船三井)の門司支店として建てられました。
設計者は
河合幾次(かわい いくじ)
建物は一部コンクリートの
木造2階建て、外壁には
オレンジ色のタイルと
白い石を貼った、目立つ装いとなっています。
外観上の特徴は4隅に設けられた大きなアーチと円弧を描いた窓、
そしてその一角に立ち上がる、8角形の
塔その造作は19世紀末のドイツ・オーストリアで起こった芸術運動・
ゼツェシオン(若手芸術家が中心となり、学術的・形式的な
芸術から離れた、個性的な創作や新たな展覧会組織の設立を目指した活動。
「分離派」とも)
の影響を受けたとも言われています。
大阪商船所有下の当時、1階は外国航路の乗客向けの
待合室、
2階は
オフィスとして使われていたそう。
昭和39(1964)年に大阪商船が三井船舶に吸収・合併された後、
平成3(1991)年に北九州市が建物を
買収、
修復・整備の後観光施設として利用されています。
これまで見てきた建築もそうですが、門司港で事業を成さんとした人々やその依頼を
受けた建築家たちは、当時ヨーロッパで展開される芸術活動の動向や
流行を敏感に察知し、それを積極的に取り込もうという意図が
あったのでしょうね。

アーチの下から足を踏み入れると、
外国へ来てしまったかのような
オシャレ空間。
右手(画面外)の階段を上がると貸しホール・
海峡ロマンホール一方開放的な通路はオープンカフェ・
マチエールとなっており、
海からの爽風を感じながらのティータイムが楽しめます。

1階の半分は「メイド・イン・門司港」の食器や金属製品・雑貨が並ぶ
門司港デザインハウスここだけの品が並ぶ店内を歩けば、お気に入りの一品が見つかるかも?
1階のもう半分は、
わたせせいぞうと海のギャラリー門司港駅のくだりでもご紹介した北九州市出身の漫画家・イラストレーター、
わたせせいぞう氏の作品を展示したアートコーナー。
受付で
100円の入館料を払って中へ入ると、
海を想起させる
青色のパネルに、わたせ氏作のイラストや漫画作品のページがずらり。
なんと言っても魅力的なのが爽やかで明るい色彩と、
それを引き立たせる構図と発想の妙。
車のボンネットに写る雲、バックミラーに入ったオシャレな家、といった
巧みな配置が
純愛をテーマとする時にスイートで、
時にビターな世界観とマッチする。
コーナーの一角に再現された
アトリエ、所々に配された
アメリカ風の信号機やレトロなアイテムも、
どこか「懐かしさ」を感じる作品世界に没入する上で、いい引き立て役♪

結局手元に何か欲しくなった私、わたせ氏の最新作・
北のライオン2巻と
イラスト入りファイルを買ってしまった(笑)
(ギャラリーの販売コーナーに並んだ本はなぜか飛び飛び。
1巻はどこだ~!)
島国・日本の物流を支える海上交通の安全への取り組みを知り、
アートな建物でアートな世界に触れたひと時。
日常の裏側と非日常の世界は心地良い刺激となりました!
次回は門司港を代表する景観と、港湾都市ならではな
用途に使われた建物を訪ねます。
それでは!


美しい景観が広がる船溜まりのほとり、飲食店や土産物店が集まる
「海峡プラザ」の前に・・・
激しく自己主張するマスコットが(笑)
エコと節電の使者・
バナナマン・ブラック(左)と
愛と正義の使者・
バナナマン(右)
バナナマン・ブラックは門司港の治安維持と客人のおもてなしを
任務とする
キレキャラで、門司港の倉庫で腐って黒くなった
ちょい悪バナナバナナマンは門司港のために走り回る
正義のヒーローで、
ライバルはア〇パンマン、敵はミ〇キーだそう(笑)
ちゃんとモデルになった人も居ます。
(芸能人の「あの人」ではない)