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島の駅利尻~まあるい世界、海藻の世界~

皆さま、お久しぶりでございます。
1週間ほど「大型連勤」が続き出掛けることもままならない状況でしたが、
一昨日にようやくお休みをもらい、わたくし久々の散策に行って参りました!
そこでバスに揺られて向かった隣町の様相を3回に分け、
充実の一日の模様をお伝えします。
島の駅利尻
「北海道は梅雨なし」の文句は、本物か。
一時の灰色の帳は消え去り、カラッとした青空とともに気温も上がって参りました。
しかしながら日本の夏特有のじめっとした湿気は無く、冷涼な
宗谷地域の気候とも相まって、過ごし易い晴れ間。

そんな好天を利し、鴛泊港フェリーターミナル前から、船ではなく
宗谷バス運行、島内唯一の公共交通機関から景色を楽しみながら
移動すること30分ほど・・・
島の駅利尻2
私が普段生活の場としている利尻富士町(鴛泊)のお隣・利尻町(りしりちょう)の
中心集落、沓形地区(くつがたちく)へとやって来ました!

周囲を海と山に囲まれた土地に宅地が広がり、徒歩圏内に病院や銀行、
郵便局、町役場等が効率的に配された町は、商店や宿泊施設も多く
利尻富士町・鴛泊地区よりもやや栄えている印象。

海辺には漁港やフェリーターミナルが築かれ、観光シーズンとなる6~9月には
礼文水道を挟んで向かい合う礼文島(香深港)と
船便で結ばれます。
今回は沓形地区の初回として、海に囲まれた利尻島ならではな
「あるもの」を使ったアートの世界へ潜入します!
島の駅利尻3
利尻島内のバス運行の拠点となっているバスターミナルを出て
島のメインルート・「利尻ファンタスティックロード」から離れると、
閑静な住宅地の中へ。
雪国らしくカラフルな、それでいて頑丈な造りの家屋が並びます。
そんな通りの途上に現れるのが・・・
島の駅利尻4
島の駅利尻 海藻の里
かつて商家として栄えながら時代とともに忘れ去られていた旧家を、
町おこしの場としてリニューアル

内部は各種ドリンク・デザートや軽食類を頂けるカフェ、自休自足
「最北端のFMラジオ」・FMを発信する
りしりに恋して♡FMスタジオが置かれている他、
食用品や不用品として販売、あるいは廃棄されている海藻を
観賞用として楽しもうという、海藻押し葉(押し花の海藻バージョンのようなもの)の
製作体験が出来るスペースや、作家さんの手によるアート作品を展示した
ギャラリー等が入っています。
島の駅利尻5
色とりどりの壁やトタン屋根がカラフルな景観を形作っている通りに在って、
異質とも言い得る和風建築は、築百年を超える利尻島最古の建築物

かつて沓形にて商いを行っていた海産物問屋・渡辺商店によって
建てられ、漁師が獲ったウニや昆布、ニシンといった海産物が
馬車によって水産加工場、沓形海産物統合配合組合を通ってここで集積・管理され、
北前船等で全国へ出荷されていました。

そうして道内有数の海産物問屋として隆盛を誇っていた
渡辺商店ですが、昭和31(1956)年頃からのニシン漁の衰退と
島の人口流出、さらに昭和39(1964)年に集落を襲った沓形大火も相まって斜陽に。
やがてこの歴史ある建物も手放されることとなりました。

そんな渡辺商店でしたが、平成14(2002)年に利尻町支援の下
「海藻押し葉」の普及と発信の場としてアトリエ利尻として再出発。
平成19(2007)年には敷地裏手に残る海産物保管用の石蔵を
「石蔵文化ギャラリー」として再生。
海藻をアートとして活用しようという試みの発信・鑑賞の場としてだけでなく、
カフェやギャラリーを通して、「島の駅」は人々の集まる場としての地位を獲得しています。
島の駅利尻6
建物内のそこここに和風建築の趣が残る主屋。
館内の一角には「最北端のまち」・稚内のFMラジオ、FMのスタジオが併設され、
時折ここで収録が行われるそう。
(先日取り上げた「稚内副港市場」内に、サテライトスタジオが置かれています)
島の駅利尻7
古民家の風合いが色濃く残る多目的室
採光用に開けられた天井が印象的な室内では、「海藻押し葉」の講習が
催行される他、利尻島内各所の利尻山を望むビュースポットより
厳選された利尻山十六景を採り上げた作品を展示中。
島の駅利尻8
主屋から中庭へ抜ける通路は、
渡辺商店タイムスリップギャラリーとなっています。

昔懐かしい雰囲気の通路沿いに商家の主・渡辺家が生活に用いた品々や
航行用の道具、一家の集合写真が展示され、ここで暮らしていた人々の
息吹きに触れられます。
島の駅利尻9
陶磁器や金属、木などで作られた暖房器具・火鉢や鉄瓶、
手を暖めるのに用いた手あぶり。
島の駅利尻26
外から汲んで来た水を貯蔵した「水かめ」や酒を入れた「大徳利」。
利尻島内の海産物を仕切った大問屋の呑んだお酒。
さぞいい品が入っていたのでしょうね~♪
島の駅利尻11
写真中央、錠前の付いた頑丈そうな箱は船箪笥(ふなたんす)
江戸時代に海運の主役として活躍した北前船(きたまえぶね)

その活躍ぶりともたらした富の大きさは富山県富山市・岩瀬の
廻船問屋森家(昨年9月27日記事参照)でもお伝えした通りですが、
今ほど航海や造船の技術が発達していなかった時代、海上輸送に付いて回るリスクは
当然高いものがあったことでしょう。

そこで万一事故や遭難の憂き目に遭った場合に備えて造られたのがこの箪笥で、
容易に破損し得ぬ丈夫な造りと気密性に優れ水にも浮かぶ構造、
材料には浸水しにくい桐材を用いて盗難防止の「隠し箱」まで完備という
鉄壁の備え
製作には3ヶ月を要したという携帯式金庫は、
渡辺家と海運との深い関りを示しています。
島の駅利尻25
ここからは花咲く中庭を抜け、敷地の裏手へ。
そこで私を待ち受けていたのは、石蔵文化ギャラリー

「渡辺商店」が健在であった頃、海産物の保管に使われていた倉庫で、
沓形大火にも耐え抜いた貴重な建物を、利尻町商工会や利尻町、
観光協会、NPO法人といった各組織が一体となって再生
雑海藻をアートとして活用した「海藻クラフト作品」や、海藻押し葉の普及と発展に尽力した
詩人・原子修(はらこ おさむ)氏の詩作等を展示するギャラリーとして
活用されています。

建物内外を覆う石材は全て利尻島から採れた地産品
島の駅利尻12
内部は壁や床に木材を使い、温かくもどこか不思議な空間。
そのアートスペースの中心に陣取るのが・・・
島の駅利尻13
「利尻球体思考」オブジェ
地球を思わせる球体の最上には海に浮かぶ利尻島が置かれ、
「島が地球全体の軸となって回り続けている」ことを表現。

海の深淵を思わせる澄んだ青色の部分には、島根県在住の和紙作家・
祖田道子さんの手による草木染めを採用、
色彩のプロデュースは、利尻の地域住民の方々とともに「海藻押し葉」を生み出した
押し花作家・たけだりょうさんが担当しています。

また球体表面を飾る利尻の情景を表した切り絵は、渡辺商店の商品を包んだ
包装紙にデザインを提供した木版画家・松見八百蔵(まつみ やおぞう)氏の
作品をアレンジしたもの。
球体の下に茂っているのは、利尻の名産・昆布をイメージして配された流木。
島の駅利尻14
球体各面に施された、利尻の情景。
緑色に彩色された波や船の部分には、商品と成り得ぬ海藻227枚
「利尻海藻クラフト」インストラクターの皆さんによって貼り付けられ、
世界の青に包まれた球体のアクセントとなっています。
島の駅利尻16
入口の反対側、球体裏面には沓形地区と思しき集落と、
雄大なる利尻山が描かれています。
島の駅利尻15
「利尻球体思考」オブジェの傍に展示されているのは、昭和11(1936)年、
今から83年前に製作された、海藻標本
この先人が遺した収集物をたけだりょうさんがアートとしてアレンジしたことから、
「海藻クラフト」の記念すべき一歩が刻まれました。
島の駅利尻17
「海藻標本」の反対側には、渡辺商店で使われていた包装紙が
飾られています。(光の具合で斜め上から撮影しております。悪しからず)

松見八百蔵氏の手掛けたこれらの図案が、「球体思考」オブジェの下地として
生かされています。
島の駅利尻18
こちらは「海藻押し葉」に言霊を与えた詩人・原子修(はらこ おさむ)氏の作品群。
「鳥影」「未来からの銃声」「受苦の木」を始めとする詩作の数々で、
現代を代表する試作者の一人。

利尻の情景を表した作品からは、美しくも厳しい、そして豊かな島の風景が
思い起こされるよう。
島の駅利尻21
こちらは「海藻押し葉」生みの親の一人、たけだりょうさんの作品。
かつてお茶の間を賑わせたテレビ番組・TVチャンピオンの
「全国選抜押し花王選手権大会」でチャンピオンに輝いた経歴を持つ
作家さんの作品は、繊細にして優美。

「浜辺に打ち上げられたただの海藻」を、ここまでの芸術作品に仕上げる。
その発想と創造性に感服!
島の駅利尻20
こちらもたけだ氏作、海底に咲く大輪の薔薇
可憐な色彩を放つ花弁に使われているのも、もちろん海藻

漁業に携わる人であれば皆敬遠するであろう腐食した海藻も、
優れた色彩感覚と芸術性を持ち合わせるたけだ氏の手に掛かれば、ご覧の通り♪
背景に使われている英字の古新聞までも、光り輝く世界の一部に思えて来る。
島の駅利尻19
ギャラリーの隅っこにひっそりと置かれていた油絵
描かれているのはもちろん島の象徴、利尻富士
作者は渡辺商店で番頭を務めていた張間敏一という方だそうですが、
「素人さん」の作だからこそ、目に見たままを描いた「そのまま」のタッチが印象的。

未だ皆さんにとって新しい記憶であろう天皇陛下の譲位新元号の制定
島の駅利尻22
それから遡ることおよそ8ヶ月前の昨年8月4日および5日、現上皇・上皇后両陛下が
北海道命名150年式典、および利尻島行幸啓としてここ利尻島
来島されました。

その際北海道からの献上品として「利尻海藻押し葉」が選定され、
デザインをたけだりょう氏、製作をたけだ氏の下で指導を受けた押し葉インストラクター、
惣万栄子(そうまん えいこ)氏が担当し、
同年末に両陛下へと無事献上されました。

ここ「石蔵文化ギャラリー」には、その時献上された作品と対となる
番い(つがい)として製作された、オマージュ作品が展示されています。
それがこちら!
島の駅利尻23
藻花の郷~夕日(もばなのさと ゆうひ)
額縁に収められ、堂々たる佇まいを見せる作品は、
去る7月1日に常設展示が開始されたばかり

両陛下がお戻りになった後の、秋の夕陽に照らされた利尻山
テーマとしています。
美しさと荘厳さを湛えながら、どこか客人を見送った後のような、物寂しさが感じられます。
島の駅利尻24
角度と位置を変えて撮影。
パッと見普通の絵と変わらないようにも思えますが、利尻昆布やバフンウニ等の海産物、流木、
アオサやアナメといった海藻、シラカバやシダといった植物が画材として
採り入れられ、「自然そのもの」を芸術品として仕上げています。

古民家の趣と、母なる海からの恵みを昇華させた芸術作品に触れたひととき。
大自然に抱かれた利尻の地がもたらしたのは、食や景色だけではなかった。
文化と芸術の源泉が、ここにもあります。

次回は島の内外にその名を轟かせる大人気ラーメン店と、
青き海を見ながらの温泉浴に浸れる施設をご紹介!
その評判に、偽りなし!!
それでは!

コメント

おはようございます。

「海藻押し葉」とは、なんともユニークですね。
それにしても、利尻の文化が詳細に述べられていて、役に立ちました。
それぞれの地域にそれぞれの文化が存在することを改めて認識しました。
記事を読んで、写真を見て、楽しめます。

私が利尻島を訪れたのは7月下旬。
観光バスで島を一周しました。
沓掛岬公園にも立ち寄りました。
ac802tfkさんの記事はいつも情報量が豊富ですね。
いつか1冊の本にまとめられるといいですね。

こんばんは

コメントありがとうございます。
私も「島の駅利尻」と「海藻アート」の存在は
知っていたのですが、ここまで多彩で華美な表現が
成されていることに驚きました。

7月というと、丁度今くらいの時期ですね。
島内や鴛泊の集落を歩くと、のどかな
離島の風景に似合わぬ大型バスが
走っているのを目にします。
沓形岬公園・・・ドキッ。
拙い文章ではありますが、日の目を見て
より多くの人へ旅と土地を知ることの楽しさ、
日本の風景を知っていただければ、よりうれしい
ですね。

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プロフィール

詞-Nori-

Author:詞-Nori-
旅行系ブロガー。
趣味は旅行、町歩き、食べ歩き、
鉄道等々。

目下地元・福岡県に戻り、
次なる行動に向けて準備中。