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アイヌコタン2~アイヌの「美」と「信仰」に迫る~

北海道の先住民・アイヌの文化とかつての暮らしに触れられる、
「アイヌコタン」。
エキゾチックな町並みを見てアイヌ料理を頂いた
前回に続いて、阿寒湖のコタン(集落)を歩きます。
アイヌコタン 2-1
「アイヌ文化伝承館チセ」の左奥に再現された、かつてのアイヌ民族の集落。
アイヌコタン 2-2
伝統的な建築技法で再現された、茅葺きの小さな家屋・ポンチセ(左)と、
食糧を保存・貯蔵するための高床式倉庫・プー(デ〇ズニーで人気の、熊のキャラクターとは無関係)

この他アイヌの集落には小熊を飼育する(!)ための檻・「ヘペレセッ」、
コタンの住人が共同で利用した厠(かわや、=トイレ)があり、
場合によっては近傍に「チャシ(砦)」が築かれることもあったそう。
アイヌコタン 2-3
「ポンチセ」と「プー」の傍に建てられた、「幸せの窓」と名付けられた
茅葺き屋根の小屋。その「窓」からは・・・
アイヌコタン 2-4
祭壇のようなものが。
これはヌササンと呼ばれる、神聖なる祭壇。
ここでアイヌの人々は御幣のような祭具・イナウを捧げ、
神への供物としていました。

アイヌの人々にとって非常に大事な意味を持つ場所故、
もちろん一般人は立入禁止
アイヌコタン 2-5
「アイヌ文化伝承館チセ」の裏に置かれた、丸木舟。
アイヌ語ではチㇷ゚と称され、「チ=我ら、オㇷ゚=乗る者」を意味しています。

アイヌの民にとり、生活必需品であったチㇷ゚。
木材には主にヤマネコヤナギ(バッコヤナギ)やの木が選ばれ、
重たく舟としては操作しにくい
ヤチダモ(アイヌ名ピン二)やニレ(アイヌ名チキサニ)の木は、
それらの木材で作られた舟をケュプチプ
(ケウ=しかばね、ウㇰ=取る、チㇷ゚=舟)と呼んで、避けるべきものでした。

チㇷ゚作りのため木材を切り出す際には、山の神にイナウを捧げ、
木の神にも祈りを述べる事で、「神の所有物」である木に斧を入れる事への
許しを乞い、神々への願いとしていました。
アイヌコタン 2-6
船首には、美しく複雑なアイヌ文様が刻まれています。
生活に欠かせない生き物、それを獲るための丸木舟。
そういった過程の一つ一つに、自然と言う「神」への祈りと感謝がある。
これもまた、アイヌ民族の「心」の結晶。
アイヌコタン 2-7
コタンの裏手、集落の入口と対を成すように守り神・シマフクロウを頂いた
こちらの施設は、阿寒湖アイヌシアター(イコㇿ)

座席数332席、立見観覧者数120人、床面積は延べ899.55㎡。
アイヌ語で「宝」を意味する劇場では、「アイヌ古式舞踊」、
「人形劇」、「イオマンテの火まつり」といった、アイヌの伝統芸能
通年鑑賞可能。(演目は時期によって異なる)
アイヌコタン 2-8
目玉となる演目が、アイヌ伝統の古式舞踊と現代舞踊、
3DCGと7.1chサラウンドといった現代技術を組み合わせた創作劇、
阿寒ユーカラ ロストカムイ

アイヌの間で狩猟の神・「ホロケウカムイ」として畏敬の対象とされながら、
明治時代に絶滅へ至った動物・エゾオオカミにスポットを当て、
失われた「カムイの世界」を表現する演目。
(今回は別のイベントを鑑賞したため、パス)
アイヌコタン 2-9
次に訪れたのは、アイヌ伝統の民家(チセ)を再現した建物。
ここはアイヌ生活記念館 ポンチセ
アイヌの人々が送った生活や、儀礼祭祀の在り方を偲ばせる展示施設。
アイヌコタン 2-12
内部には、アイヌの人々が生活を送った、家屋の様子が再現されています。
(床やパイプ椅子には、目をつむりましょう)
中央には調理や暖房器具として用いていた暖炉。
それを囲むように、暮らしの中で使われて来た生活道具や衣服、
人と神(カムイ)を繋いだ祭具などの品々が展示されています。

開館時間・・・10:00~21:00
休館日・・・年中無休
入館料・・・来館者の「お気持ち」
アイヌコタン 2-11
入口で出迎えてくれるのは、先ほどの丸木舟(チㇷ゚)よりも大きく、
風を受け止める帆を備えた舟の模型。
この舟はイタオマチプ

河川や湖沼で使う「チㇷ゚」同様の丸木舟を基礎に、外周に波を避けるための板を取り付けて
縄で綴じた、板綴船(いたとじぶね)という型式の舟。
狩猟や採集といった古代文明以来の生活を送っていたアイヌの人々ですが、
この舟で外洋を自由に行き来することで、本州以南やサハリン(樺太)、
ユーラシア大陸沿海部、カムチャツカ地方等に住まう人々と交易を行っていたそう。

航行用の機器や航海術が発達する前の時代、
現代にも負けぬ遠洋航海を成したアイヌの人々。
シンプルな造りの舟で大海へと乗り出した気骨と冒険心も去ることながら、
優れた航海術と知恵が備わっていたことも、物的交流を成し得た
要因となったことでしょう。

ここからは、「アイヌ文化伝承館」内の展示品をご紹介。
アイヌコタン 2-13
アイヌの人々が用いた棒状の祭具・トゥキパスイ
日本語に直すと「棒酒箸」、アイヌ語で「イクパスイ」とも呼ばれ、
神へ祈りを捧げる際、箸の先に盃に満たした酒を付け、
神々へ御神酒を献上。

これによって人の願いを神へと届ける「仲介役」としての役目を、
トゥキパスイは帯びていました。
アイヌコタン 2-14
こちらはエムㇱと称される刀剣類。
自然を愛し、敬ったアイヌといえど、自衛のために武器を持つことも
致し方なかった・・・という訳ではなく

アイヌの間では刀に「強力な魔除けの力がある」と信じられており、
(日本刀でも時にそういった効能が期待されたり、逸話が残っていたりします)
病魔を払う時や火災・水難事故が起こった際に、神などへの抗議として
これらの刀を振りかざし、「ウホホホ―!」と掛け声を上げる儀式が行われたそう。
(見てみたい!)

奥には刃渡りの長いタンネピコロ(長い宝刀)も
展示されています。
アイヌコタン 2-15
多彩な色と深い色合いが美しい、タマサイ(右)とシトキ(左)

「タマサイ」は正装時や日常的な儀礼の際に着用された首飾り。
「シトキ」は宗教儀礼の際に特別に身に着けられた玉飾りで、
母から娘へと引き継がれた、アイヌ女性にとってとても大切な品物。

いずれの装飾品にもトルコ石などの海外産の球が
多く含まれ、高い芸術性とともにアイヌの幅広い交易関係を示しています。
アイヌコタン 2-16
こちらはイタと呼ばれる生活用具。
日本で言うところのお盆
表面には魔除けとして複雑なアイヌ文様が彫り込まれており、
ただ使うだけに止まらない、自然界からの「贈り物」である道具を
大切に扱おうという思いが透けて見えます。
アイヌコタン 2-17
「アイヌ文化」というと、こちらの衣装をイメージされる方も多いのではないでしょうか。
これはアットゥシという、樹皮で作られた儀礼用の衣服。

オヒョウやシナノキ、ハルニレといった樹木の皮を加工した衣装。
その襟周りそのや、袖下、袖口には直線的なアイヌ文様が施されています。
儀礼の際に着用された衣装でも上等な品として、大切に扱われました。
アイヌコタン 2-18
アットゥシの周りに展示されていた、衣類や小物類。
画面上部に見えているのは、ポッチャレと呼ばれる、
産卵後の鮭の皮から作られた、冬季用の靴。

シンプルな見た目に反して、大の男でも引きちぎるのが困難なほどの
強度を持つそうで、これに乾燥させた草を挟むことで
防寒作用を持たせていました。

画面下に写っているのは、カロップ(上側)、ケトゥシ(下側)と呼ばれる
小物入れ。
アイヌコタン 2-19
「トゥキパスイ」同様、人とカムイ(神)を繋ぐ役目を果たした
棒酒箸・パスイ

細かな文様が際立つこの祭具は、言葉の不足や言い違いも正し、
アペフチカムイ(火の神)へ人の願いを伝える力を持つと信じられていました。
アイヌコタン 2-20
アイヌの人々が広域に及ぶ交易活動をしていたのは先述の通りですが、
そのことを示すのがこちらのシントコ

外出の際に食べ物や衣類を運んだり、儀礼の際に御神酒を注いだこれらの漆器は、
鉄製品や木綿とともに本州以南より持ち込まれた、交易品
歳月を重ねてやや色あせた漆器の表面には、大名家や商家のものと思しき、
家紋や文様が残されています。
アイヌコタン 2-21
「アイヌ生活記念館」を出て、民芸品店並ぶ通りへと戻って参りました。
アイヌコタン 2-22
折角やって来たアイヌコタン。
ここで土産を買わなきゃ損!ということで立ち寄ったのは、
大迫力の木彫りの熊が立ち塞がる・・・
アイヌコタン 2-23
実践工房
アイヌの末裔であろう職人さんが、一つ一つ木彫から彩色までを手掛ける、
木工品のお店。
アイヌコタン 2-25

アイヌコタン 2-26
店内へ入ると、シマフクロウや二ポポなど、
阿寒の自然やカムイにモチーフを得た木彫品が、ビッシリ!
アイヌコタン 2-24
これらの品には大変な手間と時間が掛けられており、一つ一つ手作りにて
装飾と彩色が施されています。
「慣れていますから」とご主人は語りますが、ここへ至るまでに
細心の注意が払われ、非常に繊細な作業が行われたであろうことは
想像に難くありません。

一見するととても小さな木彫品の数々ですが、
価格設定はそれぞれ数百円~数千円ほど。
サイズ感に比べると多少値が張るような心地も致しますが、
ご主人の費やしたであろう労苦と芸術品への「投資」と考えれば、
惜しくはない・・か?
アイヌコタン 2-27
結局二千円ほどを投じ、友人向けにシマフクロウの置き物、
自分用に二ポポの携帯ストラップを買いました。

自然を敬い、そこに住まうカムイからの贈り物として、
獲物や道具を大切に扱っていた、アイヌの人々。
日本、そして日本人への同化が進められる中で失われていった
自然への畏敬、信仰の在り様は、「消費社会」極まる現代社会に於いて、
顧みるべきものなのかも知れません。

次回はアイヌ民族の間に伝わる神話を映像と光、音で表現した
イベント・「カムイルミナ」へ!
阿寒湖畔の自然を活用した、神秘とメッセージ性に満ちた
物語を辿ります。
それでは!

参考:阿寒湖アイヌコタン 公式サイト
    アイヌコタン内、阿寒湖アイヌ生活館内 説明書き
    Wikipedia

コメント

おはようございます。

昨年の夏、旭川市博物館を訪れました。
ここはアイヌの人たちの歴史と文化を中心とした資料を展示しています。
市の中心部にあり、小・中学生にも分かりやすい展示形式になっています。
多くの人がアイヌ人たちの歴史や文化を学ぶ機会を得られるのはよいことですね。
ここ阿寒湖のアイヌ生活記念館は、まさに「生活」を中心としているだけに、是非訪れたい場所ですね。 

こんばんは

コメントありがとうございます。

「旭川市博物館」・・・旭川市街にそのような
施設があるのですね。
旭川散策の機会あらば、立ち寄ろうと思います。
「アイヌ文化伝承館」は、外観はもちろん、
展示品もアイヌの人々の暮らしに迫る展示が
なされており、より身近に彼らの「息遣い」を
感じることが出来ました。

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プロフィール

詞-Nori-

Author:詞-Nori-
旅行系ブロガー。
趣味は旅行、町歩き、食べ歩き、
鉄道等々。

目下地元・福岡県に戻り、
次なる行動に向けて準備中。