11.2 Saturday道東旅6日目、釧路滞在2日目。
この日は
紅葉残る釧路市街地からスタート!

繁華街を歩き、幣舞橋近くの
釧路川沿いを散歩して、
釧路駅前バスターミナルから釧路市近郊の鶴居村(つるいむら)方面へと向かう、
阿寒バスの鶴居・幌呂線で揺られること30分。
広~い平野を突っ走り、登り坂を進んだ先のバス停で下車。
バス停から車道を挟んで向かい側に見えるのが・・・
釧路市湿原展望台釧路市郊外の丘陵上に現れる展示・展望施設で、
釧路湿原近隣に点在する
展望スポットの一つ。
内部は4階建てとなっており、1階がレストランとショップ、
チケット売り場が入る
無料エリア、
2階から上が入館料を必要とする
有料エリアで、
2階に
釧路湿原の環境や動植物の生態を展示するスペース、
3階は大きな窓ガラス越しに湿原や近隣の景色を望める「展望室」、
その上が開放的な視界から大パノラマを楽しめる、屋上となっています。
宇宙船のような中心部分、中東の寺院建築を思わせる平屋部分が
組み合わさった不可思議な造りの展望施設は、昭和59(1984)年築。
この建物を手掛けたのは、
釧路市出身の建築家・
毛綱毅曠(もづな こうき)氏。
「釧路市立博物館」や「釧路フィッシャーマンズワーフMOO」、
「釧路キャッスルホテル(現釧路センチュリーキャッスルホテル)」等、
釧路市内や道内各地の建造物を手掛けた人物で、
土地ごとの風土に独創性が合わさった意匠が特徴。
そんな毛綱氏のインスピレーションはここ「湿原展望台」でも遺憾なく発揮され、
中央部分は「湿原に浮かぶ船」を、それを囲む平屋部分は、
湿原に群生するスゲ属の植物・
谷内坊主(やちぼうず)を
イメージして造られています。
入館料・・・大人480円、高校生250円、小・中学生120円
営業時間・・・5月~10月 8:30~18:00
11月~4月 9:00~17:00
定休日・・・年末年始
1階の受付で入館料480円を支払い、「有料エリア」となる2階展示スペースへ。
そこで待っていたのは・・・

植物の広がりを思わせるような、独創的な内部空間。
人工物である船をモチーフとした外観とは対照的に、
建物内部は「湿原の種子」や「胎内くぐり」をイメージして設計されたそう。
自然を見て、学ぶ施設に相応しい、メッセージ性を感じるデザイン。

「種子」の底は、湿原に生息する魚類や動植物を再現した
生態ジオラマ・
湿原の鼓動水中の環境を
青色、陸上の環境を
緑色のライトで照らし、
幻想的な雰囲気を醸しつつ、来訪者がそれぞれの環境をイメージしやすい
演出がなされています。

ジオラマにて再現された、水中の様子。
こちらは川を遡上して来た
アメマス
鮭の産卵。

釧路市域から出土した、
縄文時代の土器や石器の数々。
現在の釧路市近辺に人が居住し始めたのは
今から
一万数千年前、旧石器時代の頃。
その後現在の
釧路湿原の東側に集落が形成され、
東釧路貝塚や細岡貝塚といった遺跡から、アサリやカキ、アオノガイといった
貝類が出土しています。
縄文以後も北海道は本州とは異なる道を歩み、
狩猟・漁労・採集から成り立つ続縄文、擦文(さつもん)、アイヌ文化へと
繋がって行きます。

水槽で大柄な魚体を漂わせているのは、
日本最大の淡水魚・
イトウサケ目サケ科、すなわちサケの仲間に当たる魚で、
北海道内やサハリン(樺太)、南千島に生息。
寿命は15~16年、成長するまでに雄で4年、
雌で6年という
長寿の魚で、
カエル、ネズミ、ヘビなどを捕らえて食料とします。
サケと異なり一生で
複数回の産卵をするのも、特徴。

大きな見た目の割に
臆病な性格で、普段は倒木や沈木の影に身を潜めて
めったに姿が見られないことから、
幻の魚とも
呼ばれているそう。
近年は著しい生息数の減少から、環境省
レッドリストの
絶滅危惧種(IB類=近い将来における野生での絶滅の危険性が高いもの)に指定され、
国際自然保護連合の
レッドリストにも掲載されています。

成魚の傍では、
幼魚が元気に泳ぎ回っています。
身体の大きさの他、模様や色合いが成魚とは異なります。

湿原に生息する鳥たち、の模型。
釧路湿原ではアオジやノビタキ、ゴジュウカラ、シマアオジ、シジュウカラ、
シマエナガといった色とりどりの鳥たちが、
灌木や草地の上を飛び回っています。
模型の下には鳥たちの姿を捉えた写真が飾られていますが、
備え付けのボタンを押すことで可愛らしい鳴き声を聴くことが出来、
束の間湿原を取り巻く木々の中に身を置いた心地になります。
釧路湿原の「シンボル」とも言い得る存在が、
タンチョウ(丹頂鶴)
白い体毛と尾部、首筋の黒い模様、
赤い頭頂部が特徴の
ツル目ツル科の鳥で、140cmの全長、翼を広げた際の240cmの翼開長は
いずれも鳥類としては
日本最大級また
日本で唯一の野生のツルでもあります。
日本国内では
釧路湿原周辺域の他、道北の
クッチャロ湖や
サロベツ湿原、
十勝地方の
十勝川流域などに分布し、
越冬期には給餌場(きゅうじば)が開かれる
釧路湿原に、
ほとんどの個体が集中します。
かつて日本国内では
タンチョウは
絶滅したものと思われていましたが、
大正13(1924)年に
釧路湿原にて
再発見その後地域一丸となった保護活動が実を結び、
現在では1000羽を越える個体が湿原周辺で確認されています。
世界中での
タンチョウの個体総数は2750羽とされていますが、
その
半数以上が道東地域に生息しているそう。
ともあれ
タンチョウは依然として種の存続が危惧されている
存在であり、環境省の
レッドリストでは絶滅の危険が増大していることを意味する、
絶滅危惧Ⅱ類(VU)に指定されています。
タンチョウが餌とする生き物たち。
こちらで展示されているカエルや魚、昆虫類が主体。
冬季は餌場となる
湧水地や
湖沼、
河川などが凍結するため、
地域の人々の給餌活動(トウモロコシなど)によって生活しています。

こちらは
タンチョウのヒナ(の模型)。
生後7日ほどの姿が再現されています。
毛も羽も未成熟なその様子は、実に
可愛らしい
湿原内で暮らすのは、日本固有の種だけではありません。
国内各所同様、
釧路湿原でも
外来種の増加が問題視されており、
イタチ科のミンク、ウチダザリガニといった生態系に影響を及ぼす種への
対策が急がれています。

湿原に生える植物たち。こちらは
ミズゴケ
ヨシ・スゲ科の植物。
釧路湿原を代表する植物、
やちぼうず(谷内坊主)スゲの仲間が30~40年掛けて形成された植物の根の
集合体で、
アリやクモなどの生き物の棲み処となっています。
湿原展望台の平屋部分・「列柱」のモデルがコレ。
釧路湿原への理解を深め、これまた毛綱氏の感性溢れる
展望室を抜け、最上部の
屋上へ!

晴天の下、大きく三方に開かれた展望空間からは・・・

釧路駅を含む釧路市街地や工場群

陽光照り返す
太平洋
北西側に広がる山並みには・・・

雄阿寒岳に
雌阿寒岳
摩周湖といった都会と自然の風景が、
一望の下!
ややアングルが悪いような気もしますが、もちろん
釧路湿原も見えます!
湿原の生態系を知り、遠方まで見渡せる大パノラマが楽しめる
展望・展示施設、「釧路市湿原展望台」。
独創性と感性光る毛綱氏デザインの建造物と合わせ、
一訪の価値あるスポットでありました。
次回は展望台の傍から「自然浴」を味わえる散策路、
湿原展望遊歩道へ!
展望台内のレストランで「道東名物」を頂いてから、
冬の景色広がる森を抜け、湿原を一望する展望台を経由する
木道を一回りします。
それでは!
参考:釧路・阿寒湖観光公式サイト SUPER FANTASTIC Kushiro Lake Akan
環境省 ホームページ
展望台内説明書き