松本→東京都内への移動日となった初日を経て、二日目。
この日は一気に会津地方に乗り込みます。

関東有数の大手私鉄・
東武鉄道その幹線たる伊勢崎線の起点にして枝葉のように広がる
東武ネットワークの根っことして機能するターミナル駅・
浅草駅ここから会津への列車旅を始めましょう。

今年
東武鉄道が送り出したトピックの一つ、
SL大樹の運転開始。
それを記念し、浅草駅にもこんな展示が。
なおSL大樹の運転区間は、栃木県の
下今市(しもいまいち)~鬼怒川温泉間のんびりと、そしてレトロな旅がお望みという方には
おすすめの列車。

一方の私が利用するのは、最新技術を結集して登場した・・・
500系リバティSL大樹より一足早い今年4月21日にデビューした特急車両で、
老朽化の進んでいた300系特急型車両の置き換えと、特急運用の多様化を目的に
開発されました。
6両固定を基本としていた東武特急には珍しい3両編成とし、
前面に貫通路を設けることにより、分割・併合を実現。
途中まで二本の編成を繋げた状態で走り、分かれて別々の
目的地に向かう、という運用が可能となりました。

愛称の
Revatyには、
複数の路線で使用できる柔軟性を表現する「Variety(バラエティ)」、運用の
自由度を表す「Liberty(リバティ)」の二つの意味が込められています。
デザインを担当したのは、
E6系・
E7/W7系新幹線車両、
E353系特急型電車、超豪華クルーズトレイン・
トランスイート四季島を手掛けるなど、
JR東日本と
強固な関係を築きつつある、
奥山清行氏しかしながら、鉄道会社や車両特性の違いからか、先述の車両群とはまた違う、
シャープな外観となっています。

午前9時発のこの列車でも
リバティの特長は存分に生かされ、
前3両が南会津の会津田島駅まで向かう
リバティあいづ、後ろ3両は
北関東屈指の観光地・日光へ行く
リバティけごんとなります。
リバティ車内。
登場からまだ半年ほど。まだまだ清潔感に溢れています。
内装には沿線をイメージしたデザインが散りばめられており、
天井の曲線は
隅田川や鬼怒川の流れを表現。

座席。
足元はゆったりとしており、リクライニングすると、より寛げそう。
シート表面は、江戸の伝統色・
江戸紫が用いられています。
窓の桟が大きく、眺望を妨げがちなのが、難点か。

目を凝らしてみると、伝統芸能や日本画を思わせる伝統工芸・
「印伝(いんでん)」をモチーフとした模様が付けられています。

コート掛けを兼ねる窓の桟も独特な形状。
これは沿線を飛び回るトンボをイメージしたそう。

乗降デッキも、機能的かつ清潔。
9時ちょうど、いよいよ会津へ向けて出発です!

発車早々に見えてくるのが、
スカイツリー!晴天の下では、その姿がよりはっきりと見て取れます。
この後列車はその足元、
とうきょうスカイツリー駅に入ります。
隅田川を渡ります。
橋のたもとでは遊覧船が出航準備中。

東京都内ではひたすらビル群と住宅街を眺め、
埼玉県の
春日部駅を過ぎたあたりで、
ようやく建物が途切れます。

総延長日本第2位、流域面積は日本一の大河・
利根川を通過。

栃木県に入り、日光市域が近づいてくると、車窓に山並みが迫ってきました。
この先
下今市駅で列車は二つに分かれ、
私の乗る「リバティあいづ」は、鬼怒川温泉、その先の会津地方を目指します。

鬼怒川付近でそろそろお昼時。
列車旅にはやっぱり
駅弁!という訳で取り出しましたるは、東京名物、下町の味がたっぷり詰まった、
深川めし!
えいっ!
蓋を開けてみると、中から漂って来る、磯の香り。
なんだか岸壁に立って海を眺めているような気分。
メインは江戸の海産物。
寿司ネタとしても定番の穴子、沿岸の宝物・あさりが
その存在を主張しています。
鬼怒川に沿って進行。
時折渓流伝いに温泉街が現れます(川治温泉)。
新藤原から野岩鉄道(やがんてつどう)、さらに会津高原尾瀬口からは会津鉄道と
3社をまたぎ、列車は会津盆地へ。
終点・会津田島はもうすぐ。
会津田島駅に到着!
浅草からおよそ3時間半、
乗り換えなしで南会津までのアクセスが
可能となりました!
ここから湯野上温泉郷や大内宿、塔のへつりといった文化的・
自然的スポットへ向かうもよし、さらに先へと進むもよし。

この日の目的地は、ここから先。
荷物を抱え、乗り換えます。
車両は会津鉄道所有の気動車。
トイレ付き、二人掛けクロスシートとロングシートを組み合わせた
AT-650形と、
トイレ無し、対面式クロスシートとロングシートの組み合わせの
AT-600形の2両編成。
リバティあいづの乗客と沿線利用者を会津若松方面へ運ぶ、
リバティあいづリレー号としての運転です。

車体側面には、会津名物・
赤べこをモチーフとしたキャラクター、
あかべぇが
貼り付けられています。

東京都心から4時間満たず。
どこまでも続くかのようなビル街はどこにも無く、
田畑と平野、開けた視界を染める山々に、
別天地へと来たかのような心地。

南会津屈指の景勝地・
塔のへつり付近。
阿賀川(大川)の流れが、荒々しい断崖絶壁を生み出しています。
ちなみにへつりとは会津の方言で「断崖」の意。

首都圏方面からの観光客に配慮してか、景色の良い場所では観光案内とともに
徐行運転。
眼下を流れる
阿賀川(あががわ、別称・大川)は、
会津盆地で
只見川や
日橋川(にっぱしがわ)と合流、
阿賀野川となって新潟県へと注ぎます。
その水流が刻む流域の渓谷美は、見事の一言!
途中大川ダムが造り出した人造湖・
若郷(わかさと)湖付近を通過。
差し込む夕日、辺りを包み込む
紅葉、湖水を渡る橋梁が見せる景色は、
息を呑む美しさ。
乗客たち(私含む)も、思わず釘付け。

浅草から4時間17分。
芦ノ牧温泉の玄関口・
芦ノ牧温泉駅に到着しました!
この後は素敵な温泉滞在が待っています!
リバティの誕生によって、身近なデスティネーションとなった
会津地方。
乗客にとっては新たな旅の選択肢の誕生、また沿線の市民・自治体にとっては
誘客の材料として、目下のところは十分な成果を上げているように感じました。
利用客も多く、このままこの列車が首都圏⇔会津を物的・人的に結ぶ手段として
有効活用してほしい、と願って止みません。
次回はあの動物が守る風変わりな駅、そして
紅葉が最後の輝きを見せる
温泉街と、隠れ家的な宿をご紹介します。
それでは!