神話と神話をなぞる列車で行く
- 2018/01/18
- 16:05
海幸彦と山幸彦
神話に関する伝承の多い宮崎県でも、全国的に
知られるポピュラーな話ではないでしょうか。
宮崎旅二日目の今回は、そんな神話に題材を取った
観光列車で日南市を目指します。
地域の足・日南線の列車が多く発着する宮崎駅に
入ってきたのは・・・

JR九州が誇る観光列車(同社ではD&S、デザイン&ストーリー列車と
称します)、海幸山幸
平成21(2009)年に運転を開始した特急列車で、
特急が日南線に就役したのは史上初
とはいえ他の観光列車同様旅路を急ぐことは無く、時には
景勝ポイントで徐行・停止する等、あくまで車窓・車両を楽しむための
列車として位置づけられています。
コンセプトは木のおもちゃのようなリゾート列車

車両はキハ125系400番台
その来歴は延岡駅と山間の高千穂を結んでいた
高千穂鉄道所有、TR-400形からの改造。
かつては山景色を風を感じつつ楽しめる開放的なトロッコ車両でしたが、
平成27(2005)年に襲来した台風14号によって壊滅
休止と言う形で運転再開が模索されましたが、最終的に廃線へと追い込まれました。
そうして活躍の場を失っていた車両をJR九州が譲り受け、
水戸岡鋭冶氏デザインの元、大改造。
同一のエンジンを使用しているキハ125系気動車の系統に組み込まれました。
ただし一般型の基本番台とは異なり、「海幸山幸」専用車となっています。
在籍するのもこの2両のみ。

車体のあちこちに取り付けられたロゴマークに、JR九州らしさが溢れています。
で、この列車オンリーワンと言える特徴が、車内・車外問わずに
使われている、沿線の特産品・飫肥杉(おびすぎ)
車体側面には大胆にも飫肥杉に加工・難燃処理を
施した木板が取り付けられています。

車内も飫肥杉が多用されています。
私が乗車した1号車は全席指定の山幸
座席は赤系にまとめられています。
2号車は海幸の名で、
一部自由席となり座席は青色。
なお自由席はごく一部であるため、確実に乗車するなら指定席をご利用ください。

「山幸」の一人掛け座席。
肘置きや窓際にも木材が多用されています。
肘置きに腕を置いた際の支障とならぬよう、窓際がカーブを描いている、
優しいデザイン。

コート掛けを兼ねる座席背部も、飫肥杉で装飾されています。
そのためテーブルは肘置きに内蔵。

トイレは1号車山幸に設置。
壁面には沿線をイメージした装飾が施されています。

車内にはフリースペースも充実。
1号車前方は車内販売や案内放送を行うサービスコーナーとなっています。

サービスコーナー上部の棚には、沿線や宮崎県をイメージした
オブジェがディスプレイされています。

10時8分、南郷行き下り列車が宮崎駅を発車!
宮崎市内を流れる大河、大淀川を渡ります。

田吉駅付近では、宮崎県の空の玄関口、
宮崎空港が遠望出来ます。
機材は小型機が中心ながら、国際線も就航する等、地方空港としてはなかなかな
充実振り。
宮崎空港線によって市街地と鉄路で
結ばれており、アクセスも良好です!

日南線でも屈指の景勝ポイント、鬼の洗濯板!
これは長い年月を掛けて堆積した砂岩と泥岩が海上に露出し、
波によって柔らかい泥岩が流された結果、表面に
凹凸が生じた、というもの。それが交互に続くことにより、あたかも
洗濯板(実用している場面に遭遇したことは有りませんが)の模様のように
見えることが、名の由来。

ここで「海幸山幸」は、一時停車の大サービス!
写真を撮るもよし、のんびり眺めるもよし。
車内にはこの列車専用に作られたテーマソングが流れ、
「特別な旅」をしている、という実感に浸れます。
伊比井駅を出てしばらくすると、谷之城トンネル(3670m)へ。
その前後は長~い直線となっており、そこにはトンネルよりも長~い
一本のレール(ロングレールという)が使われています。

この画像はトンネルを出た直後のもの。どこまでも伸びる線路が、
山まで届きそう。しばらく進んだ先にある踏切が、ロングレールの終点。

飫肥駅へ向かう途上、アテンダントさんにより、
「海幸彦山幸彦」神話の紙芝居が始まりました。
先頭車で直に見て、聞くことも出来ますが、スピーカーにより
2号車「海幸」でも拝聴出来ますので、ご安心を。
で、簡単にこの話をまとめさせて頂くと、
昔々、海で海産物を獲る海幸彦と、山で
狩を生業とする山幸彦の兄弟がいた。
あるとき山幸彦が兄・海幸彦に頼み、一日釣り道具を借りることとなった。
しかし、慣れない釣りに山幸彦は大事な釣竿を紛失
兄の怒りに触れ途方に暮れていた山幸彦ですが、海辺で出会った老人(もちろんただの
お爺さんではなく神様)のアドバイスで、海神・綿津見大神(わたつみのおおかみ)の
住まう宮へ行き、そこで海神の娘・豊玉姫命(とよたまひめのみこと)と
恋に落ち、共に暮らすこととなります。めでたしめでたし!
・・・という訳ではなく、3年後、山幸彦は故郷へ帰る決心をします。
海神の助けで因縁の釣り針も取り戻し、海幸彦の元へと戻ります。
しかし田を作って暮らし始めた兄は(海神が水を絶ったため)次第に貧しくなり、
恨みを募らせた末に弟を襲撃。しかしこれも神の作戦の内。
神から授かった塩盈玉(しおみつたま)で山幸彦は海幸彦を溺れさせ、次に
塩乾玉(しおふるたま)で助けました。
これに参った海幸彦は弟に対する意地悪や遺恨を悔い、
山幸彦の身を護ることを誓った、という話。
要するに人に意地悪すんじゃねーぞ!という
訓話、という訳ですね(笑)
・・・長くなってしまいました。ちなみに山幸彦の血統は天皇家に、
海幸彦の血統は薩摩隼人に繋がる、とされています。

日南観光の中心・日南市飫肥の飫肥駅(おびえき)
では、10分ほどの長時間停車。
ここでは地元の方々によるおもてなしがあり、ホームにて地元特産品の販売や、
土地に伝わる盆踊り、泰平踊(たいへいおどり)の
衣装を着た人との記念撮影が行われています。
先へと進む乗客はこれを楽しみ、大部分の客はここ飫肥で下車して行きます。

宮崎駅から1時間あまり。港町の玄関口・油津駅(あぶらつえき)
に到着!
なにやら駅舎前ではJRの職員さんや地元の方々が作業していますが、
これはここ油津がプロ野球・広島カープのキャンプ地であることから、
地元有志の方々の発案によって駅舎を「カープ色」にしてしまおう、というもの。
2月4日に完了するこの事業に合わせ、駅にもカープ油津駅の
愛称が付けられるそうです。
とてつも無く濃厚な1時間。その中にJR九州が観光列車に
賭ける心意気と、サービスの真髄を見たような心地が致します。
ああ・・・もう一度乗りたい
さて、次回はあの映画の舞台ともなった古き良き港町・日南市油津を
歩きます。それでは!

カープ坊やも歓迎ムード?
神話に関する伝承の多い宮崎県でも、全国的に
知られるポピュラーな話ではないでしょうか。
宮崎旅二日目の今回は、そんな神話に題材を取った
観光列車で日南市を目指します。
地域の足・日南線の列車が多く発着する宮崎駅に
入ってきたのは・・・

JR九州が誇る観光列車(同社ではD&S、デザイン&ストーリー列車と
称します)、海幸山幸
平成21(2009)年に運転を開始した特急列車で、
特急が日南線に就役したのは史上初
とはいえ他の観光列車同様旅路を急ぐことは無く、時には
景勝ポイントで徐行・停止する等、あくまで車窓・車両を楽しむための
列車として位置づけられています。
コンセプトは木のおもちゃのようなリゾート列車

車両はキハ125系400番台
その来歴は延岡駅と山間の高千穂を結んでいた
高千穂鉄道所有、TR-400形からの改造。
かつては山景色を風を感じつつ楽しめる開放的なトロッコ車両でしたが、
平成27(2005)年に襲来した台風14号によって壊滅
休止と言う形で運転再開が模索されましたが、最終的に廃線へと追い込まれました。
そうして活躍の場を失っていた車両をJR九州が譲り受け、
水戸岡鋭冶氏デザインの元、大改造。
同一のエンジンを使用しているキハ125系気動車の系統に組み込まれました。
ただし一般型の基本番台とは異なり、「海幸山幸」専用車となっています。
在籍するのもこの2両のみ。

車体のあちこちに取り付けられたロゴマークに、JR九州らしさが溢れています。
で、この列車オンリーワンと言える特徴が、車内・車外問わずに
使われている、沿線の特産品・飫肥杉(おびすぎ)
車体側面には大胆にも飫肥杉に加工・難燃処理を
施した木板が取り付けられています。

車内も飫肥杉が多用されています。
私が乗車した1号車は全席指定の山幸
座席は赤系にまとめられています。
2号車は海幸の名で、
一部自由席となり座席は青色。
なお自由席はごく一部であるため、確実に乗車するなら指定席をご利用ください。

「山幸」の一人掛け座席。
肘置きや窓際にも木材が多用されています。
肘置きに腕を置いた際の支障とならぬよう、窓際がカーブを描いている、
優しいデザイン。

コート掛けを兼ねる座席背部も、飫肥杉で装飾されています。
そのためテーブルは肘置きに内蔵。

トイレは1号車山幸に設置。
壁面には沿線をイメージした装飾が施されています。

車内にはフリースペースも充実。
1号車前方は車内販売や案内放送を行うサービスコーナーとなっています。

サービスコーナー上部の棚には、沿線や宮崎県をイメージした
オブジェがディスプレイされています。

10時8分、南郷行き下り列車が宮崎駅を発車!
宮崎市内を流れる大河、大淀川を渡ります。

田吉駅付近では、宮崎県の空の玄関口、
宮崎空港が遠望出来ます。
機材は小型機が中心ながら、国際線も就航する等、地方空港としてはなかなかな
充実振り。
宮崎空港線によって市街地と鉄路で
結ばれており、アクセスも良好です!

日南線でも屈指の景勝ポイント、鬼の洗濯板!
これは長い年月を掛けて堆積した砂岩と泥岩が海上に露出し、
波によって柔らかい泥岩が流された結果、表面に
凹凸が生じた、というもの。それが交互に続くことにより、あたかも
洗濯板(実用している場面に遭遇したことは有りませんが)の模様のように
見えることが、名の由来。

ここで「海幸山幸」は、一時停車の大サービス!
写真を撮るもよし、のんびり眺めるもよし。
車内にはこの列車専用に作られたテーマソングが流れ、
「特別な旅」をしている、という実感に浸れます。
伊比井駅を出てしばらくすると、谷之城トンネル(3670m)へ。
その前後は長~い直線となっており、そこにはトンネルよりも長~い
一本のレール(ロングレールという)が使われています。

この画像はトンネルを出た直後のもの。どこまでも伸びる線路が、
山まで届きそう。しばらく進んだ先にある踏切が、ロングレールの終点。

飫肥駅へ向かう途上、アテンダントさんにより、
「海幸彦山幸彦」神話の紙芝居が始まりました。
先頭車で直に見て、聞くことも出来ますが、スピーカーにより
2号車「海幸」でも拝聴出来ますので、ご安心を。
で、簡単にこの話をまとめさせて頂くと、
昔々、海で海産物を獲る海幸彦と、山で
狩を生業とする山幸彦の兄弟がいた。
あるとき山幸彦が兄・海幸彦に頼み、一日釣り道具を借りることとなった。
しかし、慣れない釣りに山幸彦は大事な釣竿を紛失
兄の怒りに触れ途方に暮れていた山幸彦ですが、海辺で出会った老人(もちろんただの
お爺さんではなく神様)のアドバイスで、海神・綿津見大神(わたつみのおおかみ)の
住まう宮へ行き、そこで海神の娘・豊玉姫命(とよたまひめのみこと)と
恋に落ち、共に暮らすこととなります。めでたしめでたし!
・・・という訳ではなく、3年後、山幸彦は故郷へ帰る決心をします。
海神の助けで因縁の釣り針も取り戻し、海幸彦の元へと戻ります。
しかし田を作って暮らし始めた兄は(海神が水を絶ったため)次第に貧しくなり、
恨みを募らせた末に弟を襲撃。しかしこれも神の作戦の内。
神から授かった塩盈玉(しおみつたま)で山幸彦は海幸彦を溺れさせ、次に
塩乾玉(しおふるたま)で助けました。
これに参った海幸彦は弟に対する意地悪や遺恨を悔い、
山幸彦の身を護ることを誓った、という話。
要するに人に意地悪すんじゃねーぞ!という
訓話、という訳ですね(笑)
・・・長くなってしまいました。ちなみに山幸彦の血統は天皇家に、
海幸彦の血統は薩摩隼人に繋がる、とされています。

日南観光の中心・日南市飫肥の飫肥駅(おびえき)
では、10分ほどの長時間停車。
ここでは地元の方々によるおもてなしがあり、ホームにて地元特産品の販売や、
土地に伝わる盆踊り、泰平踊(たいへいおどり)の
衣装を着た人との記念撮影が行われています。
先へと進む乗客はこれを楽しみ、大部分の客はここ飫肥で下車して行きます。

宮崎駅から1時間あまり。港町の玄関口・油津駅(あぶらつえき)
に到着!
なにやら駅舎前ではJRの職員さんや地元の方々が作業していますが、
これはここ油津がプロ野球・広島カープのキャンプ地であることから、
地元有志の方々の発案によって駅舎を「カープ色」にしてしまおう、というもの。
2月4日に完了するこの事業に合わせ、駅にもカープ油津駅の
愛称が付けられるそうです。
とてつも無く濃厚な1時間。その中にJR九州が観光列車に
賭ける心意気と、サービスの真髄を見たような心地が致します。
ああ・・・もう一度乗りたい
さて、次回はあの映画の舞台ともなった古き良き港町・日南市油津を
歩きます。それでは!

カープ坊やも歓迎ムード?